■一般懸賞とは

企業が単独で実施する懸賞のことを指し、商品やサービスの購入などを条件に応募できる形式です。
消費者が特定の取引行為を行なうことで、景品が当たる抽選に応募できる仕組みとなっています。
例えば、「商品に付属している応募券を集めて応募するキャンペーン」、「商品購入時のレシートを使った抽選応募」、「店舗で購入すると応募できる景品抽選会」といった販促活動が一般懸賞に該当します。
化粧品業界でもよく見られる形式で、販売促進の一環として広く活用されています。
景品の金額制限
景品表示法では、過度な景品によって消費者の合理的な判断が妨げられることのないよう、懸賞で提供できる景品の金額や総額に明確な上限が定められています。
◎個別の景品金額の上限
懸賞で提供できる1件あたりの景品には金額の上限があり、取引金額が5,000円未満の場合はその20倍まで、5,000円以上の場合は一律で10万円までと定められています。
ここでいう「取引金額」とは、景品を得るために消費者が実際に支払う代金を指します。
定期購入や回数制サービスの場合は、契約形態によって取引金額の判断が異なる点に注意が必要です。
例えば、1年分を一括払いする契約であれば総額が取引金額となりますが、月払いで途中解約が可能な場合は、初回支払額や最低支払額が基準とされることがあります。
◎懸賞全体の景品総額の上限
懸賞において提供できる景品の総額にも制限があります。
具体的には、懸賞に係る取引によって見込まれる売上予定額の2%以内に抑える必要があります。
この「売上予定額」は、キャンペーン対象の商品・サービスに限定した売上見込みが基準となるため、企業全体の売上や実績額を基準にしてはいけません。
◎景品の「価値」の考え方
景品の金額を評価する際には、企業の仕入れ価格や原価ではなく、消費者が通常支払う市場価格(時価)を基準に評価します。
仮に企業が特別なルートで安く仕入れた商品であっても、一般的な流通価格を基に評価されるため、意図せず上限を超えてしまうおそれがあります。
表示の注意点
一般懸賞は「取引を条件とする懸賞」であるため、誰でも応募できる「オープン懸賞」とは明確に区別されます。
この区別を誤って運用すると、法令違反となるおそれがあり、企業が行政指導などのリスクを負う可能性があります。
また、広告やキャンペーンの案内文でも、表現には十分な注意が必要です。
例えば、実際には抽選であるにもかかわらず、「必ず当たる」や「全員プレゼント」など、確実に景品が得られると誤認されかねない表現は、優良誤認表示や有利誤認表示に該当し、景品表示法違反となるおそれがあります。
消費者に誤解を与えないよう、応募条件、当選者数、当選確率などは、明確かつ正確に表示することが大切です。
優良誤認表示と有利誤認表示については「化粧品広告での優良誤認表示」、「化粧品広告の有利誤認表示と対策」の記事で詳しく説明しておりますので、そちらをご覧ください。
懸賞は、適切に運用すればブランドや商品の訴求力を高める有効な手段です。
しかし、ルールを把握せずに進めてしまうと、後に行政指導や課徴金措置などのリスクが生じるおそれもあります。
特にSNSやWeb広告を使ったキャンペーンでは、予想以上の応募数が集まりやすく、思わぬ違反につながらないよう事前の確認が重要です。
懸賞を企画する際は、景品表示法のルールを正しく理解し、消費者との信頼関係を損なわない設計と運用を心がけることが大切です。
次回のブログ記事では、「共同懸賞」について詳しく説明します。